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2023/09/11 11:22


8月後半の約10日間、ネパールに出張してきました。滞在中は工房での制作活動が中心ですが、その他にも多方面で主要な人物に会うことが叶い、とても実りの多いものにすることができました。

特にコロナ禍の前から止まっていたネパールシルクの現状を知ることが大きな目的だったのですが、今回その名もNEPAL SILKという団体(営利企業)を訪問してきました。実は10年ほど前にこの団体が出来たばかりの時にも何度か訪問したことがありましたが、この団体の着実な進歩を目にして驚きと喜びを味わうことが出来ました。弁護士でもある代表とUNDPで20年のキャリアを積んだ右腕となる女性が信念を貫いて着実に経営している様子でした。

しかし彼女たちにとっても海外への市場開拓や商品開発は大きすぎる課題です。その中でもコツコツと様々な種類の糸を作り出し、布の試作を重ねていました。そんな折に私が再訪したことは、本当にNEPAL SILK に取っても渡りに船という状況だったようでした。何度も何度もお礼を言われて感謝されました。10年前はまだ化粧品やショールぐらいしかない状態でしたし、私も日本に帰国する直前で、何の購買力もありませんでした。それが、お互い成長した状態で再開することが出来たのですから感無量と言うべき再会でした。

ネパールのシルクを服として商品化することは、ネパールにとってもORIENTAL GATE というブランドにとっても必要だということは以前から考えていたことでした。コロナ禍を挟んだため、もっと難しい状況になっていることも予想していましたが、良い意味で予想を裏切られました。滞在中に2度会い、連絡を密にし、私の手元には持ち帰った沢山のシルクの糸と布のスワッチがあります。これからどのような布を織り、どのような商品を作っていくかを決めるには布を触りながらもう少し時を掛けなければなりません。しかし、新しい素材をどう加工しようかと考える作業には、手芸少女だった子供の頃と同じワクワクを感じています。

今までORIENTAL GATE で展開してきた人気のシルクコットンと最近始めたタッサーシルクはインドから入ってきています。しかし、このネパールシルクからはこれらともまた全く違ったものが作り出せます。

何が違うのかというと、繭の種類と加工法です。2001年から2011年まで、ネパールでは JICAによって養蚕の振興事業が行われていました。養蚕、製糸、加工の3名の専門家も派遣されました。しかし、その先はやはり民間の力が望まれながらプロジェクトは終了してしまいました。

しかし、2019年に養蚕農家の方と直接繋がった折に、お爺さんが初代の養蚕の専門家の方の名前を言い、彼に教えてもらったのだと熱心に話してくれこともありました。また今回訪問したNEPAL SILKという団体でも、製糸の専門家の方が導入した群馬県の伝統的な製糸方法である座繰りの技術が維持拡大されていました。(最初の写真)手紡ぎのシルク糸も生産されていました。私はネパール在住中に製糸の専門家の方に座繰りを見せていただいたことがありますが、この団体がその技術を使って立派に生産を続けていたことを本当に嬉しく思いました。JICAが支援した技術が維持されて、今民間企業である弊社が無事その役割を果たす段階にきたと思うと感慨深いです。実際、今回ネパール JICA事務所にご挨拶に行ったのですが、とても喜んで下さいました。

話を元に戻すと、繭の違いはインドのタッサーシルクは野蚕の繭であるのに対して、ネパールシルクは日本の支援によって持ち込まれた、クワを食べて育つカサンガ科のカイコの繭という点です。色が白く繊維が細く丈夫な日本と同じ種類の繭をです。また加工法の違いは、日本は機械製糸なのに対して、ネパールには動いている製糸機がないため、座繰りや手紡ぎという手作業になるということです。






つまりそれは、日本にもインドにもない、オリジナルのシルク布を作ることができるということになります。インドにもJICAがもっと長い期間支援を行なった結果、家蚕の繭も整備された機械製糸の工場がもちろんあります。しかしこの難しい国ネパールにおいてせっかくこの現状があるのですから、ネパールならではのオリジナルシルクを民間手動で作り上げていくことに力を入れていくべきだと考えます。つまり、私達が協力して作り上げることに他なりません。布として使えるようになるには、織りの密度や糸のサイズ、組み合わせなどをもう少し吟味していく必要があると思います。

輸出の需要を作り出すことは、将来的にはネパールのシルク産業が拡大することにつながります。ORIENTAL GATE として、ネパール産のシルクの服を商品化し早く日本で販売できるように、引き続き努力していければと思っています。